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海外で著作権侵害が発生したときの法律関係について(1)

事例 X社は、外国人向けのメディアを運営する日本法人(事業所は東京にあります。)です。X社に雇われているC国人のAは、X社の業務としてC国向けの外国語(C国語)の記事を制作し、X社のホームページに掲載しました。当該記事をC国の法人であるY社がC国内で全く同じ記事を作成し、Y社のものとしてY社ホームページに掲載しています(なお、サーバーはC国内にある。)。X社は、Y社のホームページを削除させるとともに、損害賠償請求の裁判をすることを考えています。この場合、①日本で裁判をすることができるでしょうか。②どの国の法律が適用されるでしょうか。

回答 ①について

結論 X社Y社間で管轄について合意した場合、Y社が応訴した場合、Y社の差し押さえるべき財産が日本にある場合、Y社が日本に事務所又は営業所の所在地を有する場合でその事務所の業務に関する場合、関連する併合請求がある場合で、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情がない場合には、日本で裁判をすることができます。

理由 (1)X社のホームページに掲載されている記事は、Aが制作したものではありますが、著作権法15条1項(職務著作)の規定により、X社の著作物となります。
(2)日本法人X社の著作物であっても、C国での利用行為が問題となっている場合、どの国の裁判所で裁判を提起できるのかという、国際裁判管轄の問題が生じます。この問題について、東京地判平成14年11月18日判タ1115号277頁(鉄人28号事件)は、我が国の民訴法の規定する裁判籍のいずれかが我が国内にあるときは、原則として、我が国の裁判所に提起された訴訟事件につき、外国法人である被告を我が国の裁判権に服させるのが条理にかなうものというべきであるが、わが国で裁判を行うことが当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情があると認められる場合には、我が国の国際裁判管轄を否定すべきであると判断しました。

(3)日本の民訴法3条の2から3条8のに、管轄についての定めがあります。その中で、関連しそうなものについて検討すると、外国法人であるY社の住所地(普通裁判籍)は日本ではなく、認められません。不法行為地に関する裁判籍についても、C国向けのサイトであることを考慮すれば、原因行為地及び結果発生地いずれもC国となると考えられます。したがって、合意管轄(民訴法3条の7)、応訴管轄(民訴法3条の8)、Y社が差し押さえるべき財産を日本に有する場合(民訴法3条の3第3号)、Y者が日本に事務所又は営業所の所在地を有する場合でその事務所の業務に関する場合(民訴法3条の3第4号)、関連性のある併合請求がある場合(民訴法3条の6)の場合で、特段の事情がない場合に日本で裁判が可能という結論になります。

回答 ②について

結論 C国法が適用される可能性が高い。

理由 (1)日本法人の著作物であっても、C国法人であるYによって、インターネット上でC国等に向けて公衆送信される場合、どの国の法律を適用するかという問題が生じます。これを準拠法の問題と言います。
(2)準拠法については、法の適用に関する通則法17条が「不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による。ただし、その地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときは、加害行為が行われた地の法による」と定めており、不法行為(著作権侵害)に基づく損害賠償請求は原則として「加害行為の結果が発生した地」の法律が適用されます。また、差止請求については、「保護が要求される国」(ベルヌ条約5条(2)参照。)との見解があります(以上『実務詳説著作権訴訟』(第2版)髙部眞規子著408~409頁参照。)。
(3)では、インターネット上で、X社の著作物である記事が、違法に公衆送信されている場合に、 「加害行為の結果が発生した地」 、「保護が要求される国」 をどのように考えるべきでしょうか。
(4)「加害行為の結果が発生した地」については、様々な考え方があります。発信国法によるとする説、受信国法によるとする説、原則発信国法だが、そこがコピーライトヘブン(著作権の保護に関する同盟に加盟していない国)である場合は受信国とする説、著作権侵害行為を分析的に考えて(アップロードによる複製、送信行為、ダウンロードによる複製)、問題とする行為が行われた地の法律を適用するとする説、利用行為の結果が最も大きい国とする説、があります。これについて結論は出ていません。なお、東京高判平成17年3月31日(ファイルローグ事件)では、被告が日本法人であり、被告のサイト等が日本語で記述されていることから、著作権侵害行為は、実質的に日本国内で行われたものということができ、被侵害権利も日本の著作権法に基づくものであるとして、法令11条1項(現在は、法の適用に関する通則法17条)により、日本法を適用しました。この考え方に沿って本件を検討すれば、今回はC国法が適用されるのではないかと考えられます。
(5)「保護が要求される国」 については、本件では、C国での公衆送信(公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うこと)が問題となっており、サーバーも受信する人もC国にあることからすれば、今回はC国法が適用される可能性が高いと言えます(インターネット上にあるデータは世界中のどこからでも受信可能ですが、著作物がC国向けであることを考えれば、条理上そのように判断される可能性は高いと考えます。なお、上記ファイルローグ事件においては、条理上日本法が適用されると判断しました。)。
(6)以上をまとめると、損害賠償請求も差止請求もいずれもC国法が適用される可能性が高いということになります。

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